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疼痛ゼロの日シンポジウムin高松:第2回難治性疼痛診療システム研究会のまとめ
テーマ~痛み難民を救う:わが国に適した慢性痛診療システムを求めて~ その4

平成26年10月19日 


                        

《講演②》

「慢性痛に対する運動療法の可能性」
 西鶴間メディカルクリニック リハビリテーション科部長
  理学療法士 江原弘之先生

【はじめに】

 私自身も中学生から30歳まで、慢性の痛みに苦しんできた元患者である。
 しかし、痛みについて正しい考え方を知ることができ、そのおかげで快復した。その経験を活かして、自分の臨床に取り組んでいる。今日は、そうした自分の臨床経験をもとに話をさせていただく。
 結論から言って、慢性痛治療に「運動療法」は有効である。なぜなら、「運動療法」は、痛みを作っている身体機能の改善につながるので痛みの元を絶つことができるからである。また、前向きな気持ちになれるという心理的な効果も期待できる。
 痛みには、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心因性疼痛の3種類があるが、慢性痛は、これらが混在し、こじれたものであると考えている。

【痛みの考え方の変遷】

 これまで、椎間板ヘルニア・腰椎すべり症・脊柱管狭窄など解剖学的な異常が痛みの原因であるという「生物医学モデル」が一般に信じられてきた。
 しかし、現在では、痛みなど身体的な症状の要因には、生物学的要因だけでなく心理的要因や社会的要因が混在するという「生物心理社会的モデル」の考え方が主流となってきた。つまり、ヘルニアなど目に見える「原因」らしきものだけに捉われるのではなく、患者さん全体をみて、治療していこうという考え方に変わってきた。
 従って、疾患だけを診るのではなく、患者さんを全人的に診るということが大事だ。

【リハビリテーションでの運動療法】

 腰部頸部痛の治療には、有酸素運動と認知行動療法が有効であると言われている。つまり有酸素運動に取り組むことと前向きの行動を促す働きかけが大切と言える。
 また、改善が見込めない部分に捉われることなく、改善できるところを良くしていこうとすることが大事である。
 侵害受容性疼痛であっても、ヘルニアとか狭窄、変形など目に見える異常のみにとらわれず、機能低下している部分を見つけ、そこを改善することで痛みがなくなることもある。
 神経障害性疼痛は、直接リハビリで改善できないかもしれない。しかし、痛みによって起こった、筋力低下や柔軟性などに介入をすることで、日常生活動作が改善され生活の質が上がることが期待される。
 線維筋痛症など全身の痛みについても、自律神経系の強化、脊柱安定性の改善、筋バランスの改善、全身持久力の改善を図ることで痛みに向き合えるようになり生活の質が高まると考えている。
 痛いから何もできないではなく、痛くてもできることはあるという方向に目を向けることが大事。  「痛みの部位だけでなく、痛みの要因を治療する」ことが必要で「痛みの部位のみ治療すると問題を見失う」ということにつながる。
 痛みを完全に治すことより、患者さんが、痛みのセルフコントロールができるようになることを目指すべき。
 本邦では、慢性痛でのリハビリテーションが正式には認められていない。技術があっても力を発揮できない状況なので、早急に改善すべきである。

文責 ぐっどばいペイン事務局 若園

江原先生

てんとう虫



最終更新日2015年5月15日