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慢性の体の痛みって、完全に治れば理想的ですが、なかなかそうもいかなくて、つきあっていかなくてはいけないことがよくありますね。 悲観的にならず、痛みがあっても日常生活を十分に明るく送る、痛みと上手につきあうことを、ペインマネジメントといいます。このお部屋では、そんなペインマネジメントに必要なテクニックを追求していきたいと思います。
オーストラリアはシドニーにあるセント・レナードの公立病院には、とても有名なペインマネジメントプログラム、ADAPT があります。 これは、慢性疼痛患者を社会復帰させるための3週間にわたる教育プログラムです。 このプログラムは、とても有名で、慢性疼痛に苦しむ患者のラスト・リゾートと呼ばれています。 どうやってもほかの医療機関で痛みが取れなかった患者に向けて計画されたものですが、今までずっと仕事にももどれずに、痛みに日常生活を送るのが困難だった患者までもが、3週間後には社会復帰するという目覚しい効果があります。 患者は、10人を一つのグループにして、期間中、毎日9時から5時まで、エクササイズと講義を受けて病院近くのモーテルに帰っていくという、まるで学生時代にもどってサマーキャンプに参加したかのような生活を送ります。その講義の内容が独特で、その後痛みとの付き合い方を覚えていくのです。日本にはまだこういった、痛みをひとつの独立した疾患としてとらえる概念がありませんし、疼痛外来とか、ペインマネジメントセンターというものもまだ日本にひとつとか、ふたつとかいう数しかないのですが、これからもっともっと発展してほしい医学の分野だと思っています。 どうして、何年も何年も痛みに苦しんでいた患者さんが、たった3週間で社会復帰できるようになるのでしょうか? そのポイントは、プログラムの運営母体である、ペインマネジメントセンターの教授にインタビューしたところ、いくつかはっきりとしたものがわかりました。
このプログラムの中での患者さんの典型的な一日を追ってみましょう。 このプログラムは朝9時から始まります。 1.ディスカッション 痛みについて、教育を受けながら10人のグループでディスカッション 2.ストレッチとリラックスのクラス 3.モーニングティーお茶とお菓子を食べながらの休憩時間 4.エアロビクスと体を鍛えるエクササイズ 5.ペインマネジメントスキルを学ぶクラス 6.ランチ休憩 7.心理的な痛みとの付き合い方の戦略を学ぶクラス 8.エクササイズ 9.スタッフとともに一日の反省 おわかりでしょうか。 一日のかなりの時間を運動に費やしていますね。 このプログラムをひとことでいうと、今まで慢性の痛みで体を動かすことを恐れていた患者さんに、怖くない、大丈夫だ、動いてみよう、と科学的に病気について正しく教えてあげるとともに、勇気付けて実際にエクササイズのクラスで体を動かしてみて、ほら、怖くない、あなたは動ける、痛みが完全に治らなくても、あなたはこんなに生き生きした生活を送れるんだよ、と体験させてあげる合宿所なのですね。 ずっと、運動をしたり、仕事をしたりすることを痛みのために恐れて出来なくなっていた患者さんたちですから、最初はとてもハードだということです。 でも、3週間が終わるころには、ほとんどの患者さんが仕事に復帰し、薬をやめて、すばらしい体験だった、といって家族の元に帰って行きます。 こういった本格的なプログラムを組めるペインマネジメントセンターは、まだ日本にはありません。 でも、このプログラムから学べるものはあるのではないでしょうか。 目をそらさずに、自分の痛みと科学的に向き合うこと。 見えないものを恐れないこと。 思い切って、体を動かすこと。 自分にはきっと出来ると自信を持つこと。 ペインマネジメント。自分で出来る範囲の努力をし、一緒に歩いていきましょうね!! ADAPTを担当しているセントレナードホスピタルの教授にインタビューしてきたレポートがあります。こちらからどうぞ。
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