学習館1 体の痛み



病気について解説のページです。

管理人の私は、むちうちをきっかけに何年もの間慢性疼痛に悩まされました。この部屋では特に私が体験した体の痛み(慢性疼痛)と、心の痛み(うつ病)について病気の解説を簡単にして見ます。私はお医者様ではないので、さらに詳しい解説はお役立ちリンクから医療関係のページにとんでいってくださいね。

痛みってなんだろう?


◆痛みのメカニズム    主要参考文献 
overcoming chronic pain whaite paper in chronic pain foundation site


 
そもそも痛みってなんでしょう?思い切って易しく書くと、体に起きた異常や怪我を脳に知らせて、手当てをしなければいけない、と自覚させるために、知覚神経を伝わる信号です。この信号によって、私たちは体を安静にしたり、薬を飲んだり、怪我の手当てをしたりして痛んだ組織の回復を図ることが出来るのですから、通常の痛みは、不愉快だけれど、私たちの体にとっては必要なものですね。

痛みにはその原因や伝わり方によって、細かく分ければいろいろな種類がありますが、あえてここで話をわかりやすくするために急性痛と慢性痛とに大別してみましょう。

急性痛というのは一時的な痛みです。たとえばけがをした場合など,体の組織が損傷されておこります。日常的にだれでも経験することだと思いますが、けがをしたすぐ後に適切な処置で組織が回復するように治療すれば、やがては消えていきます。ところが、組織のけがが十分回復をした後も治らない痛みが続く場合があります。また、組織の損傷などがなく原因が全くわからないままになぜかずっと痛みを感じることもあります。これが慢性疼痛といわれるものです。
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慢性疼痛


慢性疼痛の正確な定義について、アメリカのジャーナルのによると、

あらゆる急性の怪我や病気が、治っていく通常の過程を越えて一月以上続く痛み

とされています。

一般に急性の痛みでは、さまざまな鎮痛薬がよく聞きます。ほとんどの痛みによく聞くのが非ステロイド性の消炎鎮痛薬で、アスピリン、イブプロフェン、などといわれるお薬です。頭痛、腹痛、筋肉痛、整理痛、歯痛など一時的な痛みによく効きます。
けれども慢性疼痛の場合は、この消炎鎮痛剤が全く効かない場合が多いといわれています.

これは慢性疼痛が、痛みの悪循環を起こしてしまっているところから起きているからだそうです。

◆痛みの悪循環の図


参考:NHK生活ほっとモーニング

人が体のどこかにけがをすると、そこにある知覚神経が発痛物質を作り、痛みの刺激を脊髄に伝えます。
脊髄から脳に痛みの信号が行くと、脳は交感神経や運動神経に命令を出して、
けがをした場所からそれ以上出血しないように血管を収縮させたり、その場所を守るために筋肉を硬く収縮させたりします。

それによってその場所の血管が細くなって血流が低下します。
血行が悪くなった筋肉は酸素が欠乏して、痛みのもとである発痛物質を作りだします。

その発痛物質がまたもや知覚神経に痛み刺激を与えその信号が脊髄を通って脳に伝わります。
痛みは、痛みそのものの刺激によって増幅されるのですね。これが、痛みの悪循環です。

最近の10年間では、さらにこの痛みのメカニズムの解明が進んで、「痛み」による刺激によって、神経回路が元にもどらない変化を遂げてしまう可能性もあることがわかってきました。長期間ずっと脳に向かって送られた痛みの信号は、「痛み」の原因が治ったあとも一種の記憶として神経細胞に残ってしまって、信号を送り続ける可能性があるというのです。
これが、痛みを伝える神経の「可塑的変化」と呼ばれるものです。

一方、痛みというストレスを受け取った脳のほうでは、その痛みを癒すためのホルモン、セロトニン、ノルアドレナリン、など様々な化学物質を分泌します。これが、痛みの下行抑制と言う仕組みで、下から上がってきた痛みの信号を受け取って、その痛みを癒すために、たとえばエンドルフィンのように痛みを抑えるホルモンを放出したり、様々な痛み止め処置を上から下に向かって施すしくみです。
ところが、痛みが悪循環を起こしてあまりにも長く続くと、こういった痛みを癒すホルモンはだんだん枯渇してきます。それで、痛みを止めたり、癒したりする抑制のシステムがうまく働かなくなってしまうのです。
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こうして、長く続く痛みによって体の中で起こる様々な変化のために、ささいな痛みでも激痛のように感じてしまったり、本来痛みではないような信号でも痛みと感じてしまったり、痛みの回路とその癒しのメカニズムが故障を起こして、まるで怪我がなおったあとまでも痛みが記憶されてしまったように、いつまでもとれなくなってしまう、という現象が起こります。これが、慢性疼痛の仕組みだといわれています。

こうなってしまうと、痛み止めや一般的な理学療法、リハビリなどはほとんど効果がありません。私は、自分がこの慢性疼痛症候群に陥ってしまっている、ということは全く気がつかないまま、整形外科を転々としていました。

整形外科では、温めたり、電気をかけたり、牽引をしたりなどの軽いリハビリで治る怪我か、あるいは手術の対象になるような重症では治療のすべがありますが、その中間にある、なかなか取れない慢性の痛みや不定愁訴には余り治療のすべがありません。今良くなってから冷静に振り返ると、この隙間にある疼痛や不定愁訴は、脳が痛みを記憶してしまったり、という悪循環に陥る前に、まっすくペインクリニックに行って少しでも痛みを緩和する専門の治療を受けておくべきだったと思っています。

痛みが悪循環を起こして脳に焼きついてしまう前に、専門医のところで きちんと痛み治療をうけてケアをしていくことは、心と体の健康にとても大切なことですね。

慢性痛にはその症状やあらわれかたによって、いくつか種類があります。
簡単に図式してみましたので、参考になさってください。

痛みが慢性になるには、個人個人で違った原因やメカニズムがあって、主な原因が神経の可塑的な変化によるもの、心理的な面から来ているもの、うつ状態になっていつまでも交感神経の興奮状態から抜けられず、筋肉が常に緊張して圧迫を起こしているもの・・。さまざまで複雑です。
どのようなタイプの慢性痛であるかは、診断してもらわなければわからないことでもありますし、
自分でも自分の痛みを把握して、自己観察してそれを正しくお医者さんに伝えることも大事だと思います。
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様々な痛み止め

ここで、ペインクリニックなどでよく使われる、慢性や難治性の痛みを止めるためのお薬をいくつかあげてみます。

★OPEATES (モルヒネ、その他一般に麻薬と呼ばれる鎮痛剤)
モルヒネをはじめとするオピエート(オピオイド)といわれる薬品は、人間の脳の中でつくられる
天然の鎮痛剤であるエンドルフィンに似た作用で、かなり強い痛みでも効果的に止めることで知られています。以前は、依存症になりやすいということで、この薬の使用はとても限られた場合にのみでした。最終的に、どんな鎮痛薬も効かなくなって、患者さんの痛みが極限に達した場合にやっと使われる傾向にあったのですが、こういった使い方では、薬の使用量も多くなり、患者さんが依存症になってしまうということも起こり得たのですね。けれども、最近は割合早期に積極的に使われるようになってきました。医師の指導の下に、計画的に使用すれば、依存症になってしまう確率はきわめて少ないといわれています。
使い方も最近は研究が進んではやい時期に積極的に痛みを止めることによって、使う薬の量がとても少なく済むことがわかってきて、難治性の痛みに苦しむ患者さんはこの薬が積極的に使えるようになってからかなり楽になってきました。

★ステロイド ステロイドは人間の体の中にあるホルモンで発痛物質であるプロスタグランジンの合成をさまたげることによって痛みを止める作用を持っています。痛みや炎症を止める薬としてはこれもまた強力ですが、免疫システムが衰えたり、骨や筋肉がもろくなったりなど、副作用があるので、やはり使い方が難しいお薬として知られています。

★ 抗うつ薬 私が主に治療に使った薬物です。慢性痛に、抗鬱薬は劇的に効く場合が多くあります。何故効くのか、実はその詳しい仕組みはまだはっきりとはわかっていません。仮説として、人間が本来持っている痛みを和らげる回路にきたしてしまった異常を改善することがあげられています。脳の中の、セロトニンなどの神経伝達物質を増やす働きがあって、エンドルフィンの放出を助けるので、痛みに間接的に効果があるといわれているのです。抗鬱薬は、副作用として口渇、便秘、眠気、ふらつきなどがありますが、長期間連用しても耐性や依存性の心配はありません。最近は、SSRI、SNRIなど、副作用が少なくて比較的のみ安い薬が新薬として出てきました。

★抗てんかん薬 これも脳の神経伝達を改善したり、発作を止めたりするお薬です。時としてやはり慢性痛に効果があることがわかってきました。何故効くのか、この薬にたいしても、はっきりとしたメカニズムはわかっていません。

★抗痙攣薬 筋肉が異常に緊張している場合や、発作性の痛みに対して時々使われます。神経の中で、異常な電気信号が放出されるのを防ぐ働きがあり、難治性の神経痛や幻肢痛に効果があります。

★抗不安薬 肩こりによく処方されるエチゾラム(デパス)は抗不安作用のほかに筋弛緩作用もあります。私も日本にいたころ長い間飲んでいました。(ただし、こちらのドクターの見解によると、漫然と長期間使うことによって、慢性疼痛をますますひどくする恐れもあり、依存症を招くといわれているので、抗鬱薬を使い始めてからはだんだん整理する方向にありました。定められた用量をお守りくださいね。)

★ 筋弛緩薬 痛みによって起こるに筋肉の緊張をほぐします。短期間の首や腰などの痛みへの使用に非常に便利です。

★. 麻酔薬 局所麻酔、全身麻酔に使われるお薬(実際に全身麻酔に使われる量よりはるかに少ない量です。) ペインクリニックで専門医にお尋ねください。


ひとりひとりの症状や、痛みがどこから起こっているか、神経の故障は、神経の損傷があるか、ないかなど、慢性痛の仕組みはとても複雑です。効く薬も個人個人で違います。
薬物療法の場合、まずは通常の鎮痛薬を試してから、効果がなければ、ひとつひとつ医師のもとで ドラッグチャレンジテストを行って適薬を探していきます。

オーストラリアでは、ホームドクターであるGPというドクターがいて、様々な治療のプログラムを立てて、必要な場合は専門家にまわしてもらえますし、ペインクリニック的な治療も、専門的な麻酔以外は、GPの手元でやってもらえます。けれど日本では、全身を見るドクターの制度がなく、はじめから専門に別れているので、全身に影響が及んでしまっている慢性の痛みをとるための治療については、普通のクリニックではなかなかいい治療が受けられないのではないかという実感があります。まだまだ麻酔医の手による疼痛治療が受けられる施設は少ないと思いますが、慢性の痛みに苦しんでいる方は、ぜひお早めに、ペインクリニックの門をたたいてみてください。
専門の麻酔科のドクターに相談してみると、痛み止めにも様々なやり方があることがわかって、希望の光が見えてくると思います。
あきらめないでください。あなたにぴったりあうペインコントロールの方法やお薬は、きっと見つかるのです。
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◆ペインクリニックの治療 
ここで、ペインクリニックでよく行われる神経ブロックについて少し解説します。
  • 局所神経ブロック注射 ローカルな神経に麻酔薬を注射し、痛みがつたわるのを遮断します。いったん痛みが伝わるのが遮断されると、痛みの悪循環のサイクルが少しの間途絶えるので、患部にいく血液が増え、酸素がゆきわたるようになって、怪我の治癒や痛みの癒しを促進することが出来ます。そのはたらきが、単に麻酔が効いている間痛みを止める、と言う以上の効果があるのです。
  • 星状神経節ブロック  のど仏のわきに、星状神経節という自律神経の塊があります。ここに注射をして、交感神経の興奮をしずめて血行をよくする働きがあります。痛みの悪循環を断ち切るので、これも頻度の多い注射のひとつです。
  • 硬膜外ブロック  硬膜外腔にハリを刺して、筋肉を弛緩させて、自律神経の遮断をするブロックです。やはり、患部に行く血流をよくしたり、酸素を十分行き渡らせるような作用があります。
ペインクリニックで行われる麻酔注射は、普通の注射より細い針が使われるので、決して耐え難いほど痛いものではありません。どれも、痛みが遮断されることによって、血流が促進され、発痛物質が洗い流されて、細胞に酸素が行き渡り、痛みを元から癒す働きにつながります。
麻酔だからといって、必ずしも一時しのぎのものではないのですね。

このほかにも、レーザー光線照射や、特殊ブロックなど、クリニックによって多くの選択肢があるようです。詳しくはそれぞれのクリニックにお問い合わせください。

オススメの書籍、さらに詳しい資料についてはこちらのリンクをどうぞ  痛みのお部屋




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