むち打ちの回復の鍵の研究

アメリカで出版されている、MEDLINE という医学系の雑誌の記事を要約してみます。
43人のむち打ち受傷患者の資料をもとにした研究結果によると
むち打ちになったあとで、その痛みが慢性なものになるかどうかは、事故の大きさそのものより、その人の文化的な背景で決まっている部分がある、というニュアンスの記事です。

この記事は、決してむち打ちで首の痛みや不定愁訴を抱える患者さんが、実際にはあるはずのない痛みを空想で作り上げている、という意味ではありません。
けれども、このたびドイツで行われた研究によると、北米や、カナダや、そのほか沢山の欧米諸国では、むち打ちを受傷後に患者が慢性的な痛みを抱えてしまうことが多いことにたいして、ドイツやギリシャ、リトアニアなどいくつかの限られた国では、患者はほとんどの場合とても早く痛みから回復するそうです。
これは、この対照的な2種類の国で、むち打ち、という怪我に対する国民の心証ー考え方が違うからだといわれています。

この新しい研究は、ドイツの外傷センターで行われました。

患者のグループは、事故後すぐと、事故から半年たってから研究者との心理カウンセリングを受けました。
研究者には同時に、その患者たちの事故の様子、レントゲン写真による客観的な怪我の程度など、詳しい資料が与えられました。それによると、最初の心理的なカウンセリングと事故の重大さ、X線の程度によってその患者さんの半年後の痛みのレベルはある程度予想することが出来ました。

ただひとつ、研究にかかわった学者にとって意外な結果だったのは、そのドイツ人の患者たちが押しなべて皆予後がとてもよかったことでした。

患者群のうち、19パーセントの人々は一月以上痛みを感じていましたが、大部分の患者は一週間以内に痛みから解放されていました。
一方治療はといえば、3分の一ほどの患者が非ストロイド系の消炎鎮痛剤を服用していましたが、ほかは薬物治療なし。たった8人の強く首の痛みを訴えた患者のみが頚椎カラーをほんの数日しただけで、あとは皆治療らしい治療はしてしませんでした。

研究者によると、ドイツやギリシャ、リトアニアという国々では、むち打ちというのは広く一般的に、数日から一週間ほどでよくなる怪我だと信じられていて、実際それらの国ではほとんどの患者さんがさほどの治療をしない傾向にあるそうです。

なぜ、カナダや北米の患者とドイツやギリシャの患者が(つまりその国民たちが)、そのようにむち打ちという怪我に対して、全く違う心証を持っているのかははっきりわかっていません。

次の研究テーマは、そういう文化的な背景に関して、例えばマスコミのメッセージなどが、どのように患者の文化的な背景とかかわっているのかを調べることが必要だといわれています。
引用サイト http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/news/fullstory_17772.html



さて、ここまでが実際の記事です。

この記事をもとにして、だからあなたの痛みは思い込みだ、ととても痛かったころの私に向かって誰かが言ったとしたら、私はとても傷ついたし、怒ったに違いないと思います。

ただ、今怪我から6年以上の月日がたって、こうして寛快してみると、痛みという人間の感覚がいかに心の持ち方や暗示に支配されているかということはうなずけるような気がします。

この記事でひとつ救われるのは、北米やカナダの患者さんはむち打ちにたいして、どんな人物であるかどうかはまた別の話として慢性の痛みを抱えやすいことにたいして、ドイツやギリシャの患者は押しなべて皆予後がよい、と書いてあるところです。

これは、痛みを長く持つ患者の性格が神経質であるとか、ネガティブで思い込みが強いとか、そういう個人攻撃ではないので、わりに心理的に楽に受け入れられます。
今、つらかったあのころの痛みを思い出すと、実際の痛みのほかに、なぜこれほど痛むのか、どうやったら楽になるのか、どの程度の期間で治るのか、考えられる後遺症などんなものか、などまったく具体的な明るい情報がなく、まるでこの痛みが一生続くのではないかと不安で仕方がなかったことが、痛みにますます拍車をかけていたと思いだせます。

情報って、大切なのですね。いい加減な、そんなの気の持ちようだよ、とか痛いはずないよ、思い込みだよ、という無責任なものではなく、その人が心の底から安心できるようなしっかりした信念に近い、絶対楽になるのだ、という確信は、痛みが楽になっていくことにとても大切なのだと思います。
だから、文化的に、国民全体で、むち打ちという現象はたいした怪我ではなくすぐ治る、と
固く信じられている国では、気の弱い人も、神経質な人も、押しなべて予後がよく痛みから早く解放されることが出来たのだ、と思います。これは、100年前の結核が不治の病と信じられていたけれど、今の世界の人が結核で死ぬことはない、と信じているようなものですね。

さて、今このトピックスを読んでいる方の中で、痛みやうつ状態にとても苦しんでいる方がいらしたら、ここで私からのメッセージ。

むち打ちもヘルニアも、いつか絶対よくなります。
2つもヘルニアを抱え、首が側湾した挙句、顎関節もずれてしまい、一時はまともに歩くことも出来なかった私も、よくなりました。だから、大丈夫。

きっと、もう少しで楽になります。

我慢しないで、ある程度お薬を飲んだり麻酔をしたりして対症療法で生活の質を上げることは大切だけれど、あとは前向きに、積極的に将来を考えて、そうしてできるだけ怪我のことを忘れて楽しい、希望のある毎日を送ってください。

今痛い痛い毎日を送っていると、前向きになるのは難しいことだけれど、でも、思い切ってこの期間を人生の休養と考えておいしいものを食べたり、すきな映画を見たりするのもいいでしょうし、心理的に楽な方法で毎日をやり過ごす工夫をするのもいいと思います。

そして一時期の安静が過ぎたら、少しずつ楽しみながら歩いたり、泳いだりして体を動かす工夫をしましょう。
心がのびのびしてくると、首や腰も緊張がほどけてくるから・・・・。
心の病のうつ病も、本来お薬がとてもよく効く病気です。なかなか治らない病気でうつ状態にある人も、きっともう少しで楽になります。治るという確信を持ってください。

そして、ゆっくりと休んで、気長にリハビリしてくださいね。



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