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うつ病は、最近心の風邪といわれるようになって、とてもポピュラーな病気になってきました。 心の病気、というと気持ちが病気になっているように感じる方が多いと思うのですが,実際には脳の病気です。 脳内で分泌されているたくさんの化学物質、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの各種ホルモンが、精神的なストレスや、体の病気、怪我などによって、代謝異常をおこしていまい思うように体や心をコントロールできなくなる状態になっています。
見た目にはなんともありませんし、レントゲンや血液検査には異常が出ないため、なかなか理解されにくい病気である上に、心の病、という表現から、気の持ちようで治るかのように捉えられがちですが、大事なことは、これは脳という臓器の病気であって、薬物治療でしか治らない、という認識です。 ほかの内臓の病気、たとえば、肝炎、腎盂炎、胃潰瘍などの病気にかかると、普通の人は病院に行って、治療を受けますね。仕事も休み、時には入院をして万事を繰り上げて治療に全力を尽くすと思います。 うつ病も同じです。脳の機能異常ですから、早期発見、早期治療で予後が決まってくるのです。 おかしい、と思ったら、無理をせず、一日も早く精神科や心療内科のクリニックに行くことをお勧めします。 これは、個人的に私のケースですが、むち打ちがきっかけで長く続く痛みに悩まされているうちに、朝起きて顔を洗ったり、歯を磨いたりといった、当たり前の行為すら、エネルギーが切れたようになって、大変な体力を消耗するようになりました。人と会ったり、話たりすることも億劫になり、何事にも興味がもてず、とにかく首と背中が痛い、という日が続きました。これはすべてむち打ちから来る症状であると思っていて、自分がうつ病を発症しているとには全く気がつきませんでした。 特に今思い返して変だったと気づくことは、怪我をして痛みが治らないことに対して、激しく自分を責めていたことです。 世の中には、がんにかかっても弱音を吐かずに前向きにがんばれる人もいるというのに、たかがむち打ちの後遺症くらいで痛みを我慢できない私は大変無価値な人間である、と自己嫌悪していて、自分をいつも責めていました。 典型的なうつ病の症状のひとつの自責感ですが、自分では病識がありませんでした。このように、体の病気が長引いたときに、自己嫌悪に陥ってしまったり、無気力で希望がない状態になってしまったり、眠れなくなったり、食欲をなくしたりなど、症状がひどくなってしまったケースでは、知らないうちにうつ病を発症していることもあるようです。 なかなか治らない体調不良や、特にこれといって原因が思い当たらないのに悪化してしまった慢性の病気は、一度うつ病を疑って見ることも必要かもしれない、と思います。 心の病気、というよりはうつ病も、体の病気なのですね。
心の痛みのお部屋
何らかの原因で慢性疼痛を抱えている患者さんは、多かれ少なかれ抑うつ状態にあります。気がつかないうちに、うつ病を発症しているケースもたくさんあるようです。 ごく常識的に考えても、体に24時間取れない痛みをずっと抱えていると、気持ちは自然に落ちこんできますね。これが続くと、誰でもある程度うつ状態になります。 抑うつ症状が出てくると、脳の中で痛みを受け止めて癒しを与えるホルモンが枯渇してきます。精神的なストレスで起こるうつ病と全く同じメカニズムで脳が機能異常を起こしてきます。そうすると、わずかな痛みであっても、受け止める感覚器官の性能がおかしくなってくるので、ますます痛い・・・ひどい痛みにまたもやうつ状態になる、もっと痛い・・・。うつ病と慢性疼痛には、密接な関係があり、研究者によっては、慢性疼痛とはうつ病そのものだ、と言い切る学説を唱える学者さんもいるようです。 普通のうつ病と同じように、慢性疼痛から起きたうつ病(うつ病から来る慢性疼痛かも知れませんが)の治療には、抗鬱薬がよく効きます。それも、精神的なうつ状態が抗鬱薬で改善されるのにはしばらく時間がかかりますが、痛みの場合にはある程度即効性があるといわれています。 最近はペインクリニックでも、長く続く痛みに対して抗鬱剤を早くから処方することが多いようですが、まだまだ抗鬱剤が整形外科で処方されるケースは少ないようですので、長く続く慢性の痛みは、ペインクリニックや精神科を受診して抗鬱剤による薬物治療を検討してみることをお勧めします。 いつまでもいつまでも治らないひどい腰痛や肩こり、交通事故やスポーツ障害の後遺症など、突破口が見つかるかもしれません。 身体の病気とうつ病について解説したページをご覧ください。
うつ病にしろ、うつ病と合併してしまっている慢性疼痛にしろ、患者を励ましてはいけない、ということがよく言われますね。 これは、私の経験からいっても確かな事実です。 どういう仕組みでそういう感情になってしまうのかよくわからないのですが、うつ病にかかっているあいだのものの考え方は、とても自責的です。 励ましてしまうと、患者さんは、励まされているというより、なかなか治らないことでせめられているようにしか聞こえないのです。 とくに、慢性疼痛の場合、大丈夫、たいしたことないわ、とか、もっとひどい人もいるのよ、という励ましとも慰めともつかないことをいってしまいがちですが、これはやはり最悪の対応です。 だったらどうしたらいいのか・・・・。ただただ甘やかせ、というのか。という疑問が聞こえてきそうですが、まずは、本当に痛いんだ、と共感してあげることが第一歩だと思います。 仮病ではなく、本当に痛いんだ、と信じてあげてください。その上で、この痛みは絶対に治るから、治療をしましょう、といって、できるだけ具体的で、科学的な対処をしてあげてください。
とくに、私の経験したむち打ちのケースで言えば、被害者意識がますます痛みを強くしている、前向きに考えて事故のことを忘れれば痛みも取れる、と周りから言われて、まるで痛いことが自分の罪のように考えてしまう人はたくさんいます。 それでは治らないのです。 確かに、ストレスや不安はますます痛みを強くするので、前向きに考えることは大切なことなのですが、前向きに考えなくてはいけない、とか人に痛みの愚痴をこぼしてはいけない、とか、もうとっくに治ってもいいはずだ、などの周りの人からのプレッシャーは、それ自体がストレスになって、ますます痛みを強めてしまうケースが多いのではないでしょうか。 慢性疼痛は、一度はまってしまうと、重症のうつ病と同じで、薬物治療によってしか治りません。気の持ちようでは決して治らない病気です。 そのことをまずわかってあげて、患者さんが自分を責めずに、科学的な治療を受けられるような体制を整えてあげることが大切だと思います。 まとめになりますが、こちらのページをご覧ください。私が経験したことが、お医者さまの講義でとてもわかりやすくまとまっているページがありました。私の実体験と合わせて、ご参考になさってください。
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