慢性疼痛を起こしやすい病気



前のページで、痛みのメカニズムと慢性疼痛の起こる仕組みについて学習しました。ペインクリニックの有用性についてもわかっていただけたと思います。
ここのコーナーでは、慢性疼痛を起こしやすい病気について解説します。

慢性疼痛を起こしやすい病気について、少し例を挙げてみます。病名の青字リンクをクリックすると、それぞれ詳しい解説ページに飛ぶことが出来ます。

★リューマチ    いわずと知れた、全身に痛みが広がる病気です。 関節の炎症がずいぶんよくなってからも、執拗に続く痛みに悩まされることが多いといわれています。リューマチ、という名前で有名ですが、この病気は膠原病のひとつです。
自己免疫疾患で体の様々なところに炎症が起きますので、痛みがつきものの病気です。
ペインコントロールを上手にして、それ以上痛みの悪循環を起こさないようにすることが患者さんのQOLを大きく左右します。

★椎間板ヘルニア 手術しても、治らない。なぜ?手術するほど大きくないといわれたのに、ものすごく痛い。なぜ?一度ペインクリニックか精神科を訪れて見ましょう。私のケースでは、抗うつ薬でいたみがとれました。

★むち打ち     不定愁訴といわれ、誰にもわかってもらえない心の痛みが、ますますストレスとなって、痛みを癒すホルモンを枯渇させていきます。なかなか治らない不安やストレスが、首の筋肉の緊張を招き、悪循環になることもあります。漫然と整形外科に通ってもよくならないようなら、あきらめて民間療法に走る前に、思い切ってペインクリニックや精神科のドクターにも相談してみましょう。 

★腰痛
 腰痛、と一口に言っても様々な原因があります。上に記している椎間板ヘルニアもその原因のひとつですが、そのほかにも、脊椎分離症、すべり症などレントゲンではっきりと原因のわかる疾患はいくつかあります。一般に痛みが長く続くので、自立神経のバランスを崩しやすく、長年つきあっているうちに痛みが刷り込まれてしまって心因性の疼痛になってしまうケースも多いようです。ネットでも様々な情報がありますので、痛みが刷り込まれてしまわないうちに、専門家の診断を是非受けてくださいね。長く続く腰痛は、関節の異常からはもはや離れて、疼痛そのものが病気になっている可能性が強いのです。

★顎関節症     しつこく続く、顔面や口の中の痛みに、心のバランスを崩す患者さんがたくさんいます。かみ合わせや、顎のずれが原因のケースとは別に、ストレスによる食いしばりが関節や筋肉を傷めていることが多いので、ストレスを取り除く心身両面からの治療アプローチしないと、マウスピースだけではなかなか痛みがとりきれないことも多いようです。私の場合で言えば、マウスピースの治療と同時に、抗鬱薬の服用や、リラックスする訓練、口をあける練習、筋弛緩剤、夜寝る前の自己暗示、などスペシャリストの手厚いカウンセリングと治療で克服できました。心理的な側面からのアプローチもしてくれる優しい歯医者さんをさがし、同時に精神科や心療内科にも相談してみることもお勧めです。

顎関節症のあなたに 私の書いた顎関節症のリハビリのページですが、よろしかったらご覧ください。

★線維筋痛症  原因不明で慢性の痛みが広がる病気です。抗鬱薬や、ノイトロピンという鎮痛薬でよくなる人もいます。まずは専門医の診断を受けてください。整形外科ではなく、確定診断はリュウマチ科で行います。

★帯状疱疹  激しい痛みを伴う皮膚科の病気です。痛みが長引くと帯状疱疹後神経痛になり、なかなか治療しにくくなります。ペインクリニックに相談しましょう。一刻も早く痛みを止めたほうがいい病気です。

★RSD(反射性交感神経性萎縮症) 原因はまだはっきりわかっていませんが、何かちょっとした怪我や体の不調、手術などをきっかけに、その場所が激しく痛むようになり、それが慢性的に続く病気です。比較的珍しい病気ですが、放置すると非常に治りにくく、対処がとても困難な場合が多いといわれています。ペインクリニックの交感神経ブロックがよく効く患者さんもいます。リンクを張っておきますので、自分がそうではないか、と心当たりの患者さんは、専門の麻酔医の元ではやめに治療を受けてください。(こちらのリンクもご覧ください。 ◆神経再生治療 慢性の痛みに明るい光が

★頭痛
長い間、頭痛というのは痛みの中でも特殊なものと考えられていて、頭痛学会というものが生理学で扱われる痛みの疾患の中でも特別に独立して存在していましたが、ごく最近、これも頭痛であっても通常の痛みと同じメカニズムで発症して、同じような経過をたどることがわかってきました。大雑把にわけると、脳に直接ダメージを受けたときに発症する頭痛と、緊張性頭痛、偏頭痛の3つに類別されます。
それぞれ全然治療が違うのに、混同されることが多く、よいお薬が出ているのにもかかわらずあまり多くの人がその恩恵を受けていない、これもとても痛みのケアが後れている疾患だそうです。治療の第一歩は、自分の頭痛はどれに所属するのか、正しい診断を受けること。市販の頭痛薬をしょっちゅう飲んでいる方は、一度きちんとした治療を受けられることを認識してください。

★筋筋膜性疼痛症候群
慢性の腰痛や、肩こり、顔面痛など様々な痛みの中で、関節に異常がないもの・・。筋肉や筋膜の炎症によるものをいいます。わかりやすく一言で言うと、慢性の筋肉の凝りです。この筋筋膜性疼痛、と言うことばはよく使われる言葉ですが、わかりやすい定義を文献から見つけることが出来ませんでした。要するに、肩こりや腰痛で病因にいっても、レントゲンで骨に異常はありません、といってあっさり言われてしまうタイプの慢性の痛みです。
骨に異常はないけれど、痛みはそういわれてもちっとも取れない、という不定愁訴を抱える患者さんがほとんどだと思います。
これも、筋肉の慢性のコリのポイントに、局所注射で麻酔をすると痛みがよくなると言われていますが、最近アメリカでの実験で、麻酔を入れなくても、針をさしただけでかなり痛みが減少するということがわかってきました。筋肉に刺激を与える、ということがとても重要なことなので、おそらくマッサージであっても、鍼灸の治療であっても、低周波であっても、ストレッチであってもある程度の効果があると思われます。
ただ、完全に治癒するためにはかなりの時間がかかる、やはり慢性の経過をたどりやすい病気ですね。筋肉、筋膜の障害で、骨に異常がないならすぐ治るか、というとそれがうまくいかないというケースが多いと思います。

この筋肉の障害にも、最近はやはり神経回路の故障で、患者さんが痛みを記憶してしまっていることが多いとこが確かめられています。また、長く続く痛みのために大変不安が強い状態からうつ状態になっていて、それが緊張をよび、いつまでたっても筋肉が凝りつづけていることも多く、一筋縄ではいきません。
そのケースでは、長く対症療法をするより、早めに抗鬱薬など、直接中枢神経に働きかける薬物を飲んだほうが治りが促進される場合があるそうです。
心因性、と言う言葉には誤解が多いのですが、これからは慢性の痛みに精神科で治療を引き受けるなど、今までと違うアプローチで治療を進めるシステムが開発されてくるかもしれませんね。

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慢性疼痛にしないために


さて、慢性疼痛について解説をしてきましたが、慢性疼痛って、なってしまうとやっかいな病気だな、という印象をもたれたのではないでしょうか。
治療よりは予防のほうが易しそうですね。
ここで、普通の怪我を慢性疼痛にしないために、もしくはもう慢性になってしまっている痛みでも、少しでも治癒に向かうためにこれ以上痛みを歪ませない、自分で出来る対処法をいくつかご紹介しましょう。

◆痛み止めの正しい使い方
痛みがおこったとき、まず一番飲み薬として処方されることの多い非ステロイド系消炎鎮痛剤の正しい使い方をご紹介します。
一般的に痛み止めといわれるお薬です。痛みを止めるほかに、炎症を抑えたり熱を下げたりする作用もあります。
この薬は、発痛物質のもとになるプロスタグランジンを産生するのを抑える働きがあるので、炎症が起きている患部ではプロスタグランジンが作られなくなり、痛みや炎症を抑えることが出来るのです。ただし、プロスタグランジンには胃の粘膜を保護する働きがあるので、炎症や痛みを抑える代わりに胃腸障害を起こしてしまうことが多く、長く飲み続けると胃の不調が起きてきてしまう副作用がありました。
最近では、そういった副作用が起こりにくい、イブプロフェンなどのお薬や、胃ではなくて腸で溶けるようなカプセルなども工夫されてきています。


★痛みは我慢してはいけない
痛くなってからのむのではなくて、痛みが起きる前に飲めるように、必ず痛み止めは時間を守って飲みましょう。体の中に常にお薬が一定の濃度であるようにしておきます。

★たっぷりの水と一緒に飲む
胃の粘膜を保護するため、なるべく食後に、なにかしら食べてから、コップいっぱいの水と一緒に飲んでください。

★痛み止めの外用剤なども、痛くなってから貼るのではなくて、痛みが治まったとき、たとえばお風呂から上がって温まって痛みが治まったときに貼るなど、痛みのない時間を維持できる使い方を工夫します。

★薬の作用時間によって、効果が現れる時間が違うので、張り替える時間の指示を守ってください。冷えて気持ちのいい感じがしなくなっても、薬の効果はその数時間あとで最大になることもあります。体感と薬の効果が別だとういうことを認識しておいてください。

★一般に、急性で炎症がある場合には、消炎効果のある冷シップ、慢性で血行が悪い場合には血行を促進するために温シップをします。それぞれの薬の効果を考えた使い方をしましょう。
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一般の医療機関で行われる痛みの治療


一般的に、整形外科や接骨院で行われる痛みの治療を少し解説します。
いわゆる理学療法といわれるものです。
慢性疼痛には効果が限られたものが多いのですが、その原理を知っておくと、治療にたいしてどの程度まで期待できるか少し見通しがついてくると思います。
クリップアート Baby's Breath

★理学療法といわれるものは、患部に直接作用して怪我をした組織の柔軟性をとりもどしたり、組織を鍛えて強くすることをサポートしたり、痛みによって損なわれた組織の可動や働きをとりもどすために行われるものです。
腰痛や肩、首などに障害をかかえる患者さんに、姿勢や矯正のための運動をしたり、温熱治療や超音波、マッサージなどを含むものです。

★低周波治療
整形や接骨院で一番頻繁に行われる治療法です。
皮膚からごく弱い低周波をおくることによって、天然の麻薬といわれるエンドルフィンの放出を促したり、神経線維を刺激して、痛み信号で興奮した神経のバランスを整えたり、などの効果を期待する治療です。

★遠赤外線、マイクロ波などの温熱治療
患部を温めて、血行をよくすることによって、怪我をした組織の損傷を早く治すことを目的に行うものです。

腰痛や肩こり、首の痛みに関しては、アメリカ実験で、慢性の痛みを抱える患者さんにたいして1年間理学療法を行った場合と、行わなかった場合とで痛みのスコアが減ったかどうかを調査する者が実験が行われたところ、ほとんど変わりがなかった、という報告があって、その効果については疑問視されているとも言われています。
温めたり、引っ張ったり、電気をかけたり・・・。
どれも、患部に刺激を与えて血流を促し、怪我の治りをよくしたり、痛みを緩和したりするための治療ですが、なかなか慢性になってしまった痛みについては大きな効果は期待できないようですね。
痛みは、怪我をしてすぐ、それほど大きくないうちに、先取りして手厚く鎮痛してしまうことが一番の治療法だといえると思います。

ただ、痛みを癒すためのホルモン、セロトニンは温泉などに入って温まったり、ゆっくりした音楽を聴いたりしたときによく放出されると言う調査がありますから、リハビリを気持ちいい、痛みが止まる、と思って前向きに楽しめるようなら確かに効果があるのではないでしょうか。また、関節の可動域を広げるための治療などは積極的に行わないと、ますます機能が失われて筋肉が固くなり、痛みの範囲が広がってしまうことにもなりかねません。
近くの整形外科や接骨院などで通常のリハビリ治療を行うときも、自分の体の声を聞きながら、納得のいく治療が受けられるといいですね。


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